ブラジル風バッハ / Bachianas Brasileiras (バッキアーナス・ブラジレイラス)
1930年、ヴィラ=ロボスはおよそ7年に及ぶパリ生活から帰国する。
ヨーロッパ大陸のクラシック音楽界に認められた南米出身の作曲家はほとんど
はじめてであり、そのような「名士」として、ヴィラ=ロボスは帰国とともに
リオ・デ・ジャネイロの音楽院院長に就任する。
パリに行く前にスタートした「ショーロス」シリーズは、言ってみればブラジル音楽と
クラシック音楽の融合実験だったわけで、彼は、このシリーズを帰国前の1929年で
打ち上げ、帰国にあわせて、より斬新な構想によるシリーズを発表していく。
ブラジル音楽の息吹とバッハの精神の統合という途方も無い発想の第1作が
8本のチェロによる作品というのも、いかにもヴィラ=ロボスらしい破天荒さ加減だが、
ヴィラ=ロボス自身が何度も言及しているように、彼は終生バッハを敬愛し、
このシリーズがけしてパロディではないことを強調している。
シリーズは1930年の第1番から45年の第9番まで。
中にはブラジル風に傾き過ぎ、というかほとんどブラジル音楽と表現した方が
いいものもあれば、厳格な対位法によるフーガもあり、バランスが取れていないと
評されるものもあるが、全体を貫く精神にはおおよそブレが無いと言えるだろう。
作曲家として最も脂の乗った時期の作品であり、間違いなく彼の代表作(群)である。
第1番と第5番が8本のチェロのために書かれており(第5番はソプラノ独唱を伴う)、
この2曲が一般的には最も知られたヴィラ=ロボス作品と言って過言ではない。
特に第5番の第1曲「アリア」冒頭の旋律は「ブラジルの憂愁」をもっとも的確に
表現したものとして有名。
第2番の第4曲「カイピラの小さな汽車」は単独でも演奏されるもので、
彼のオーケストラ作品中で最も有名なものであるが、これなどはバッハとは
縁遠い雰囲気の曲である。
ブラジル的な果てのない喧騒の雰囲気と伝統的クラシックが交互に登場する
「第7番」あたりはもっと演奏されていいものではないかと思われる。
【作品リスト】
第1番 1930 8本のチェロ
第2番 1933 オーケストラ
第3番 1934 ピアノとオーケストラ
第4番 1930 ピアノ独奏 (1941年にオーケストラ編曲)
第5番 1938(1945改訂) ソプラノ独唱と8本のチェロ
ソプラノとギターのための編曲あり
第6番 1938 フルートとファゴット
第7番 1942 オーケストラ
第8番 1944 オーケストラ
第9番 1945 無伴奏合唱、または弦楽合奏
【CD】
ブラジル風バッハ 全曲 (3枚組)
ブラジル風バッハ 第1・2・5・9番 (自作自演)
ブラジル風バッハ 第2・5・6・9番 カポロンゴ指揮 パリ管
ブラジル風バッハ 第2・4・8番 ロペス=コボス指揮
ブラジル風バッハ 第2・5番, ギター協奏曲, ほか クリヴィヌ指揮
ブラジル風バッハ 第2・5・6番より ほか
ブラジル風バッハ 第4・5・7・9番/ショーロス第10番 ティルソン・トーマス指揮
ブラジル風バッハ 第1・5・7番 バーバラ・ヘンドリクス
ブラジル風バッハ 第1・5番/ソプラノとバイオリンのための組曲 The Pleeth Cello Octet
【この記事 以上】